2013年09月10日

東直己『駆けてきた少女』

〈2013年読書感想10冊目〉

 〈ススキノ探偵〉シリーズの第6作目。これまでの作品の中では一番気に入らない感じ。面白くないわけではないけれど,物語の展開が釈然としない上に結末にも全く納得できません。後書きによると『ススキノ,ハーフボイルド』と『熾火』という別シリーズの作品を読むことによって物語の真の完結を見るらしいのだけれど,逆を返せば本書だけでは不完全な物語であるということも出来ます。それは上手く機能すれば頗る面白いと思うのですが,少なくとも本作品では良い方向に作用はしていません。主人公である“俺”は終始事態に翻弄されており,爽快感に欠けるのも負の評価となってしまいます。高田や松尾,種谷ら馴染みの人物が総登場するのはある種のお祭りめいていて楽しかったのですけれどね。寧ろ,本作品において“俺”を完全に手玉に取っていた柏木香織の存在感が目立っていた気がします。一方で思わせぶりに登場しながら全く活躍の場が与えられなかった松井省吾の存在意義は微妙。『ススキノ,ハーフボイルド』では主人公を務めるとのことですが,それならそれで本作品でも一定の出番を設けて欲しかったように思います。それにしても終盤での盛り上がりのなさは読んでいて辛いものがあります。理不尽に対して憤る“俺”の姿は変わらずに好ましいのだけれど,物語が散漫過ぎて焦点が定まっていない気がします。かなり消化不良気味なのが残念でした。他作品との連携を体験すれば,多少は感想は変わるかもしれませんけれども。でも,やはり本作品単体での評価は低いです。
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posted by 森山 樹 at 21:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想