2013年09月17日

アランナ・ナイト『蒸気機関車と血染めの外套』

〈2013年読書感想12冊目〉


 ヴィクトリア朝を舞台とした〈刑事ファロ〉シリーズの第三作目。蒸気機関車から姿を消した淑女の謎に迫るファロ警部補の活躍が描かれます。前作『エジンバラの古い柩』の結末があまりにも衝撃的過ぎたので今作は如何なることかと期待していたのですけれども,拍子抜けする程に殆ど触れられていないのが余りにも悲しい。事件そのものも容易に真相が見通せて全く面白さを感じません。登場人物に特段の魅力を感じない本シリーズにおいて,物語にさえも際立った楽しみを得ることが出来なければ,読書をする価値を見出せなくなってしまいます。創作と史実の均衡もやや気になるところ。ヴィクトリア朝を代表する人物の名前が物語に登場するのは嬉しいのですが,そこで止まってしまっているのが残念に過ぎます。前作の如く,意外な形で物語に密接に関わってこなければ,それは単なる雰囲気作りでしかありません。歴史ミステリィを標榜するならば,そのあたりも期待したいところであります。いずれにせよ,前作の結末に過剰な期待感を抱いてしまった印象が強いです。今作で得てしまった失望感を覆すほどの作品を今後願いたいと思います。単純に前作がシリーズを代表する白眉であったという可能性の方が高いのかもしれませんけれども。
posted by 森山 樹 at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想