2013年10月06日

畠中恵『若様組まいる』

〈2013年読書感想18冊目〉
畠中恵 若様組まいる


 『アイスクリン強し』で活躍した若様組の警察教習所時代の出来事を描く作品です。主人公となるのは若様組の中心人物である長瀬。勿論,福田や園山ら『アイスクリン強し』でも個性を発揮した面々は今作でも強烈な存在感を見せてくれます。皆川真次郎や小泉沙羅たちも脇役ながら印象的な動きをしてくれるのが嬉しい。相変わらず,皆川真次郎が手掛ける洋菓子は実に美味しそうであります。物語は良くも悪くも畠中恵作品だなあという印象。面白いことは面白いのですが,鮮烈な印象には欠けてしまいます。ある種の倦怠感を覚えると言うのは言いすぎかもしれませんけれども。綺麗にまとまってはいるのですが,目新しさがまるでないのですよね。登場人物も多い割には実際に動いている印象があるのはごく僅か。そもそも若様組からして8人は多過ぎます。物語の解決もいささか釈然としないものを感じます。このあたりはもう少し何とかならなかったのかなあという想いを抱かざるを得ません。沙羅の父親である小泉琢磨や幹事こと有馬将勝らの存在感は素晴らしいものがありましたが。特に幹事は本作中でも一番お気に入りの登場人物。この一作だけで終わらせるには惜しい人物に思えます。不満は感じるけれど,高品質の安定感は素直に評価したいもの。若様組たちの旅立ちとしては至極美しいと思います。畠中恵作品の雰囲気が好きならば問題なく楽しめる作品でありましょう。
posted by 森山 樹 at 12:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想