2013年10月14日

京極夏彦『続巷説百物語』

〈2013年読書感想19冊目〉
京極夏彦 続巷説百物語


 江戸時代を舞台とした妖怪絵巻『巷説百物語』の続篇。今回も6篇からなる短篇集の体裁を取っております。但し,前作と明確に異なるのは各篇が微妙に或いは露骨に絡み合い大きな一本の線へと集約されるということ。具体的には若狭の小藩である北林藩を舞台とした凄惨な連続殺人が全てに連なる物語となります。また,又市やおぎんら一味の過去に関わりのあるお話が収められているのも特徴的。冴え渡る仕掛けの爽快感はそのままに,しかし無常観漂う余韻が印象に残る作品ばかりであるとも言えましょう。中でも語り手である百介と又市らとの永遠の別れを描いた「老人火」は格別であります。読後に暫し放心するものを感じました。6篇はいずれも変わった趣向で楽しませてくれますが,個人的には「飛縁魔」の悲しい遊女の物語が一番心に残っています。そして,強烈な人間の悪意に恐怖を感じます。「死神」は全ての線が一点に収束するお話。全てに片を付ける又市の仕掛けの見事さに感嘆するとともに因果応報という言葉をかみしめざるを得ません。圧倒的な雰囲気がたまらない。現実の辛さや厳しさを逃れる為に作りだされた存在としての〈妖怪〉に悲しさを覚えます。割と救いのない物語が続くので陰鬱な気分になりますが,物語として至極好み。後味は決していいわけではありませんが,読了時の満足感は頗る高いものがありました。百介と又市らの永遠の別れが描かれてしまったので,次に如何に繋がっていくのか楽しみであります。
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posted by 森山 樹 at 15:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想