2014年02月02日

皆川博子『開かせていただき光栄です』

〈2013年読書感想33冊目〉
皆川博子『開かせていただき光栄です』


 18世紀ロンドンを舞台とした歴史ミステリィ小説。前日譚を描いた番外篇も収録されています。解剖学教室が物語の中心に据えられるわけですが,これが完全に実在した外科医ジョン・ハンターの解剖学教室そのまま。盲目の治安判事ジョン・フィールディングが実名で登場するのに対してジョン・ハンターがダニエル・バートンと名前を変更されているのは彼とその兄で内科医のロバート・バートンが扱われる事件に大きく関わっているからでありましょう。個人的にはそれを差し引いてもジョン・ハンターという実名を使ったほうが良かったように思いますけれども。ダニエルの解剖学教室から発見された四肢を切断された少年と顔を潰された男のふたつの死体という謎の提示は魅力的。事件解決に至るまでの丁寧な足取りも楽しく感じました。また,解剖学教室の面々も個性豊かで面白い。特にエドワード・ターナーとナイジェル・ハートのふたりは事実上の主人公と言ってもいいでしょう。また,ジョン・フィールディングのもとで捜査を担当する姪で助手のアン=シャーリー・モアもかなり好みであります。もう少し活躍の場が与えられても良かったと思うくらい。事件の真相そのものは割合に見通しやすいものですが,最終盤での法廷での大逆転劇の爽快感は素晴らしかった。全てが丸くとは言えませんが,それでも可能な限り綺麗に納まる結末だったのが嬉しい。非常に端正なミステリィ作品でありました。同じくダニエル解剖学教室を舞台とした続篇も刊行されている模様。此方もいずれ読み進めたいと思います。
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posted by 森山 樹 at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想