2014年05月06日

宵野ゆめ『グイン・サーガ(132)サイロンの挽歌』

〈2013年読書感想43冊目〉
宵野ゆめ『グイン・サーガ(132)サイロンの挽歌』

 宵野ゆめによって綴られる〈グイン・サーガ〉正伝の第132巻です。五代ゆう版とは舞台を異にし,豹頭王グインによって統治されるケイロニアが舞台となります。衝撃的であった『パロの暗黒』程ではないものの此方も物語は急展開。栗本薫によって予告されていた『売国妃シルヴィア』に至るグインの苦闘が描かれます。トルクの巨大な群れに幽閉されたシルヴィア王妃を巡って暗躍する謎の男と異常な事態に翻弄されるケイロニアの王都サイロンはまさに呪われた都と呼ぶに相応しい有様。何といっても,七人の魔道士事件からは僅か一年しか経っていないのに異変が続くというのは不穏に過ぎます。この事態にグインを始めとするケイロニアが如何に立ち向かうかが楽しみ。但し,宰相ハゾスがそれ程有能に思えないのは非常に不安。シルヴィアが生んだ不貞の子を死産と偽るべきではなかったかと思われます。アキレウス皇帝の危篤に際してもローデス選帝侯ロベルトの活躍のほうが印象深いですね。個人的には〈青ガメ亭〉の女将ロザンナや薬師ニーリウスらが今後存在感を発揮してくれることに期待します。また,シルヴィアの為に愛と忠誠を捧げるパリスの扱いが非常に良くなったのも興味深い。姿を消したシルヴィアともども今後の消息がケイロニアに大きな影響を及ぼすことになるでしょう。彼にトルクを操る力を与えたのが何者なのかも気になるところです。何はともあれ,十分に満足の行く作品でありました。宵野ゆめ版〈グイン・サーガ〉の次巻は愈々『売国妃シルヴィア』ということになります。ケイロニアに災厄を齎すシルヴィアの帰結が楽しみであります。個人的にはシルヴィアには同情的であり,彼女を此処まで追いつめたハゾスたちにこそ問題があると思っているのですけれどね。
posted by 森山 樹 at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想