2008年01月27日

若竹七海『バベル島』

2008年9冊目
バベル島 (光文社文庫)
バベル島
  • 発売元: 光文社
  • 価格: ¥ 560
  • 発売日: 2008/01/10

 光文社文庫の装丁が変わっていますね。本棚に並べた時の統一性が図れなくなるので,個人的にはあまり好ましくありません。
 久しぶりに読む若竹七海の新刊です。単行本未収録作品を集めた短編集なので,本当の意味での新作ではないのだけれど,読んだことのない作品ばかりだったので気にしない。

 11編の短編が収録された短編集。若竹七海が得意とする連作短編集ではなく,純然たる短編集となっています。個人的には少しだけ残念なところ。ただし,「白い顔」と「人柱」,あるいは「人柱」と「上下する地獄」のように作中でカギとなる言葉が連携している作品もあり,配列の妙を味わうことが出来ます。また,「上下する地獄」では『製造迷夢』の登場人物が姿を見せるのも嬉しいです。他には気づかなかったけれど,作品の繋がりはあるのかな。
 若竹七海のホラー趣味が前面に押し出された短編集と言えるでしょう。ミステリ的な妙味も多分に含まれますが,やはり読後に残るのは後味の悪さ。これが若竹七海作品の醍醐味でもあります。超自然的な怖さも人間心理の怖さも共に味わえるのが嬉しいところ。特に人間心理の怖さを書かせたら天下一品ですね。静かに人間の狂気を描きだした「白い顔」はとりわけ好みの作品。また,不条理さに嫌な気分となる「回来」はきちんと物語にオチがあるのが面白い。登場人物の髪が鮮やかな緑という伏線を見事に生かしているのが「ステイ」。これも静かな狂気の物語。構成が面白いのは「追いかけっこ」だけど,これは少し技巧に捉われ過ぎた気がして,あんまり好きではないかも。案外,仕掛けは分かりやすいものだったしね。個人的に一番好きなのは表題作「バベル島」。結末は容易に想像出来るんだけどね。ブリューゲルの〈バベルの塔〉を現実に建造しようという壮大な夢に魅せられてしまいます。ただ,表紙絵が全てのネタばらしになっているように思うのは気のせいか。イラストとしてはすごくいいんだけどね。
 全般的に面白いんだけど,個人的にはやはりミステリ色が強い作品の方が好み。それに若竹七海の場合,純然たるホラー作品よりも人間の悪意を描いた作品の方にこそ薄ら寒い恐怖感を覚えます。それなりに楽しめたのだけれど,中途半端な印象も否めません。久方ぶりの作品ということで事前の期待が大きかっただけど,聊かの拍子抜けも感じてしまいました。少し残念だったかな。
 余談ですが,「バベル島」で大きな役割を果たす葉村寅吉ですが,『プレゼント』や『悪いうさぎ』で活躍した葉村晶の曽祖父だったら面白いのにな。更に言えば,この物語の語り手が葉村晶という可能性がないわけでもないのか。
posted by 森山 樹 at 21:02| Comment(0) | TrackBack(1) | 感想
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