2014年09月15日

鯨統一郎『歴史バトラーつばさ』

〈2014年読書感想5冊目〉
鯨統一郎『歴史バトラーつばさ』


 日本文化の研究を巡って鎬を削る〈和風研〉と〈SOJ〉との間で交わされる熾烈な歴史討論を描いた学園歴史ミステリィ短篇集です。但し,同作者の『邪馬台国はどこですか?』に始まるシリーズを期待するとかなり当てが外れるかもしれません。扱われる題材は「千利休」「松尾芭蕉」「出雲阿国」の三題。どれもかなり薄味で定説に毛が生えた程度の目新しさしかないのが悲しい。それでも「出雲阿国」はそれなりに面白かったけれども。問題は無駄に多い登場人物が機能していないということとあまりにも軽すぎる地の文が上滑りしているように思えること。面白くないわけではないのだけれど,娯楽小説にしても後に全く残らないというのは悲しいものがあります。時間潰し以外の何物でもないのだものなあ。特異な設定と奇矯な登場人物が舞台装置としての役割を果たしていないように思えるのですよね。これなら普通に女子高生が喫茶店で茶飲み話をしているというのと然して変わりありません。〈和風研〉と〈SOJ〉を巡る大人たちの策動も思わせぶりなだけで終わってしまっています。或いは続篇が予定されているのかもしれませんが,続きへの希求心に欠けてしまっては元も子もないと思うのですけれどね。結局,バカミスとしても中途半端な印象しか残りません。『邪馬台国はどこですか?』の頃の異常に濃密で意外性のある歴史談義を求めることは最早無理なのかなあ。あまりにも残念すぎる作品でありました。

タグ:鯨統一郎
posted by 森山 樹 at 09:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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