2008年06月15日

佐藤賢一『ダルタニャンの生涯』

2008年42冊目
ダルタニャンの生涯―史実の『三銃士』 (岩波新書)
ダルタニャンの生涯―史実の『三銃士』
  • 発売元: 岩波書店
  • レーベル: 岩波書店
  • スタジオ: 岩波書店
  • メーカー: 岩波書店
  • 価格: ¥ 735
  • 発売日: 2002/02
  • 売上ランキング: 37077
  • おすすめ度 5.0

 アレクサンドル・デュマの〈ダルタニャン物語〉は子供向けの翻訳で通読しました。改めて読みなおそうと思うと講談社文庫版はずっと絶版中なんですよね。ブッキングから復刊されたものを全巻揃えるには高額になるし悩ましいところです。せめて名作古典くらいは手に入りやすい状態になって欲しいなと思います。

 『三銃士』『二十年後』『ブラジュロンヌ子爵』と続くアレクサンドル・デュマの〈ダルタニャン物語〉の主人公ダルタニャンのモデルとなった実在の人物シャルル・ダルタニャンの生涯を追ったノンフィクション。『二人のガスコン』でダルタニャンを主人公に据えた小説を著している佐藤賢一だけに非常に面白い読み物となっています。歴史上にその名を残すほどの人物ではないにせよ,歴史小説の主人公として取り上げられるに相応しい快男児としての実在のダルタニャンの姿が印象的です。というか,『三銃士』中でダルタニャンの印象はあまり強くありません。本書を読むことによってダルタニャンという人物に血肉がついた感さえあります。それ程に実在のダルタニャンという人物は魅力的でありました。
 基本的にはパリに出仕してから,マーストリヒトで戦死するまでのダルタニャンの生涯が時代を追って描かれています。デュマの『三銃士』ではリシュリュー枢機卿との関わり方が印象に残っていたのですが,実際のところダルタニャンの生涯の多くはリシュリューの後継者マザランや太陽王ルイ14世との関係で占められています。あるいは政敵としてのコルベールの存在も面白いところです。個人的に一番ダルタニャンに魅力を感じたのは自らが逮捕することになる財務長官ニコラ・フーケに対する態度です。主君ルイ14世の命に従い,フーケを逮捕したダルタニャンですが,彼に対する接し方が不思議なほどに好意的なのですね。その様は「王には忠義あり。かつ護送する囚人には人道あり」とフーケ派のセヴィニェ夫人に絶賛される程。この処置を高く評価されてルイ14世からは重用されるようになり,片やコルベールからは憎まれるようになるというのが彼の後半生に大きく影響をしていきます。特に人間不信気味だったルイ14世の寵を得たというのが素晴らしい。作者はこの理由について幾つか挙げていますが,やはり失脚したフーケへの誠意がルイ14世の心を打ったのだと信じたいところです。
 残念なことに〈ダルタニャン物語〉を通読したのが相当昔であること,なおかつ児童向け翻訳であったということから,特に『二十年後』『ブラジュロンヌ子爵』の内容を殆ど覚えていないのです。デュマの小説と比較することで,より楽しみを得られる読み物ですので非常に悔やまれます。それでも,本書だけをもってしてもシャルル・ダルタニャンなる一代の快男児の波乱に満ちた生涯を楽しめることと思います。
 余談。入手できるうちにブッキングからの復刊全11冊を購入しておいた方がいいのかもしれません。が,20000円を超えてしまうのが本当に悩ましいところです。講談社が文庫版を再刊してくれれば一番なのですけどね。需用もあると思うのだけれども。
posted by 森山 樹 at 11:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/16027967
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック