2007年01月21日

斉藤直子『仮想の騎士』

2007年10冊目
仮想の騎士
仮想の騎士
  • 発売元: 新潮社
  • 発売日: 2000/12

 虚実織り交ぜた異形の歴史小説って,なんて楽しいんだろう!! 
 18世紀フランスとロシアを舞台に美貌の騎士にして大使デオン・ド・ボーモンを主人公に,サン・ジェルマン伯爵,カザノヴァ,ルイ15世,ポンパドゥール侯爵夫人,アストン・メスメル等々歴史にその名を残す人物の華麗な宮廷陰謀劇を楽しめます。基本的に史実に沿っています。作中でも七年戦争やルイ15世の暗殺未遂事件が取り上げられ,その舞台裏に隠された秘密を物語ります。これが本当に楽しいのよ。惜しむらくは終盤の盛り上がりが些か欠けているように思えたこと。僅かな瑕疵ではありますが,それ故に残念でありました。
 デオン・ド・ボーモンの不幸っぷりもいいのですが,なんといってもカザノヴァの存在感が素敵。イタリア訛りのフランス語を関西弁で表現しているのが非常に似つかわしく思います。また折々で蘊蓄めいた挿話が入るのも個人的には好み。本筋に絡んでいるので,知識をひけらかす的な嫌みを感じさせません。ところでロレンツァの素性を思い出せた自分を誇ってもいいでしょうか。
 表紙に書かれたスペードの9が男であり女であり剣士であるデオン・ド・ボーモンを如実に表現しています。万人向けではないのでしょうが,少なくとも自分の趣味には完全に適した素敵な作品でした。満足満足。『夜のピクニック』とは違った意味でこんな小説を書きたいものです。

 冲方丁原作/夢路キリコ『シュヴァリエ』を読んでいるせいか,登場人物のギャップに驚きながらも,それがまた楽しかったり。併せてこの作品を読むのも一興かと思います。違った魅力のデオン(&リア)・ド・ボーモンやルイ15世,ポンパドゥール侯爵夫人,サン・ジェルマン伯爵たちと出逢えます。そして,『仮想の騎士』では情けない役だったダグラス・マッケンジーが非常に格好いいのです。
posted by 森山 樹 at 20:20| Comment(2) | TrackBack(0) | 感想
この記事へのコメント
検索しているうちに、辿り着きました。本作の著者、この作品以外、書いていないようですが、本当に面白かったですよね。レヴューを読んで、冲方丁原作/夢路キリコ『シュヴァリエ』が気になりました。機会があったら読んでみたいと思います。
Posted by Medeski at 2011年07月12日 08:25
>medeskiさん
斉藤直子さんは最近執筆活動再開されています。
河出文庫のSFアンソロジー「NOVA」を確認してみてください。
短篇を2篇くらい発表していたと思います。
夢路キリコ『シュヴァリエ』は第一部完の状態です。
早く第二部を再開して欲しいものですが……。
Posted by 森山 at 2011年07月15日 05:59
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