2013年09月21日

三津田信三『水魅の如き沈むもの』

〈2013年読書感想14冊目〉
三津田信三 水魅の如き沈むもの


 〈刀城言耶〉シリーズの第5長篇。今回の舞台となるのは奈良県の山奥。水魅様と呼ばれる水神を祀る四つの村で起きた湖上での奇怪な連続殺人事件に挑む刀城言耶の姿が描かれます。雰囲気は従来作どおりに陰鬱としたもの。但し,刀城言耶と彼に同行する祖父江偲の惚けた描写が物語に奇妙な明るさを与えています。特に祖父江偲は過去作でも何度か登場してきていますが,事件に密接に関わってくるのは本作が初めてとなります。なかなか騒動屋として存在感のある娘さんですので今後の活躍も期待したいところです。事件そのものは相変わらず二転三転する刀城言耶の推理が素直に楽しい。様々な角度から検証することによって事件の姿が徐々に変化する楽しみも味わえます。このあたりの試行錯誤しながら真相に近付いていく過程を楽しむ作品であると言えましょう。なお,今シリーズにしては珍しく爽やかな読後感を得られるというのも嬉しいところ。やや飽きを覚えることもあった今シリーズの転換点となって欲しい。多かれ少なかれ不満を覚える今シリーズに置いては少なくとも個人的には白眉の作品でありました。過去作との微妙な関係を窺わせる人物の登場も楽しかったです。
タグ:三津田信三
posted by 森山 樹 at 06:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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