2013年09月29日

京極夏彦『巷説百物語』

〈2013年読書感想17冊目〉
京極夏彦 巷説百物語


 〈京極堂〉シリーズと並ぶ,妖怪を扱ったもうひとつの京極夏彦によるシリーズ〈巷説百物語〉の第1作目。〈京極堂〉とは異なるアプローチによる妖怪の扱い方が実に興味深い。7篇が収められた短篇集であります。複雑怪奇に絡み合った〈京極堂〉シリーズとは異なり,短篇ということもあってやや先が見通しやすい物語となっているのは残念。但し,妖怪の名を借りて悪に鉄槌を下す又市やおぎんの仕掛けは小気味よい。全般的に暗く陰鬱な雰囲気が漂うのは物語の趣旨を考えたら仕方がないところではありましょう。しかし,後味の悪さもかえって魅力的に思えるのが不思議ではあります。7篇はいずれも印象的な作品で甲乙つけ難いものがあります。敢えて挙げるならば,やはり冒頭の「小豆洗い」ということになるのでしょうか。語り手である百介が又市らの仕掛けに初めて触れる記念すべき物語であります。この百介は常に仕掛けの外に身を置きながら,以降はいずれも重要な役割を担うのが面白い。仕掛けには全く寄与しないにも関わらず,或いは全く寄与しないが故に,又市らからのある種の同朋感を抱かれているように思います。純然たる短篇集であり,物語を通じての仕掛けは特に見受けられません。それがやや残念にも思えますが,やるせなさの残る読後感が印象的な短篇集でありました。独特の言葉遣いがまた雰囲気を醸し出しており素敵に思います。
タグ:京極夏彦
posted by 森山 樹 at 15:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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