2013年10月20日

京極夏彦『後巷説百物語』

〈2013年読書感想21冊目〉
京極夏彦『後巷説百物語』


 『巷説百物語』『続巷説百物語』に続く〈巷説百物語〉の第3作目。時代は明治初期へと下り,今は老人となった百介こと一白翁の回想をもって物語られます。今回は『巷説百物語』同様に一話完結の短篇集。一白翁が聴き手である剣之進に語る表層上の真相とその後に小夜に語る本当の真相の隔意が面白い。物事は見方によって幾らでもその真実の姿を変えることが良く分かります。尤も関係者の幸せの為には本当の真相を隠したままにしておくことも又ある種の正義なのでありましょう。このあたりは如何にも又市やおぎんらの仕掛けらしいなと思います。なお,前述の小夜はおぎんの孫にあたる娘。彼女自身の物語は「五位の光」「風の神」で明らかになります。『続巷説百物語』に収録された「老人火」において永遠の別れを告げた百介を,又市はしかしその後も見守り続けていたことが判る「五位の光」の結末は胸が熱くなります。また,同じ作者の〈妖怪〉シリーズの中の『狂骨の夢』及び『陰摩羅鬼の瑕』と繋がる要素が垣間見えるのも嬉しい。特に『狂骨の夢』の発端が又市の仕掛けにあったというのはあまりにも予想外でありました。こういったシリーズ間でのささやかな連携は楽しいものであります。「風の神」は〈巷説百物語〉シリーズの幕開けとなった「小豆洗い」と同様の趣向が興味深い作品。百介の物語を閉じるに相応しい作品であると言えましょう。この作品をもって百介が関わる〈巷説百物語〉は終わりました。しかし,シリーズとしてはまだまだ続いております。又市らの仕掛けをまだ楽しめるのは重畳というもの。暫しの時間を置いて,また読み始めたいと思います。この作品を含めた三作も再読することで新たな発見を得られましょうから,いずれ取りかかりたいと思います。
タグ:京極夏彦
posted by 森山 樹 at 18:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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