2013年11月10日

朱川湊人『鏡の偽乙女』

〈2013年読書感想24冊目〉
朱川湊人『鏡の偽乙女』


 大正時代を舞台とした連作短篇集。朱川湊人らしくファンタジィともミステリィともホラーともつかない雰囲気が素直に好みであります。幻想と怪異に満ちた物語は何処か郷愁を感じさせ,切なさと愛おしさが入り混じった空気を醸し出しています。端正な文章も大変に美しい。5篇が収録されていますが,個々の作品は基本的に独立しています。“みれいじゃ”と作中で呼ばれる生きる死者を巡る物語が中心となりますが,必ずしも“みれいじゃ”が登場するわけでもありません。但し,この“みれいじゃ”が扱われる物語は印象的なものが多いのも事実であります。“みれいじゃ”はこの世への執着を持った者がなる存在であり,自らの死を他人に知られると消滅する存在でもあります。絶対悪というべき者ではなく,寧ろ愛故にこの世に未練を残した存在ということもあり,哀切な結末を迎えることが多いのも事実。だからこそ,“みれいじゃ”を操る黒幕である“蒐集家”と呼ばれる謎の人物への怒りを覚えてしまいます。その“蒐集家”の手先となって暗躍する琴町三郎の胡乱な存在感はかなり好み。主人公である槇島功次郎と穂村江雪華の前に今後も幾度となく姿を見せることになるのでしょう。収録されている5篇の中ではやはり「夜の夢こそまこと」が一番好き。その題名通りに江戸川乱歩に纏わる悲しい物語であります。“みれいじゃ”とそれを成仏させる絵を描く雪華の物語はまだ終わっていません。結末で匂わされた続篇の刊行を期待したいと思います。陰鬱たる出来事が続く大正という時代に“みれいじゃ”と雪華との物語が如何なる帰結を迎えるのか楽しみであります。
タグ:朱川湊人
posted by 森山 樹 at 21:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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