2013年12月04日

丸山天寿『死美女の誘惑』

〈2013年読書感想27冊目〉
丸山天寿『死美女の誘惑』


 中国は秦代の琅邪の街を舞台にした連作ミステリィ短篇集。『琅邪の鬼』『琅邪の虎』の番外篇的な立ち位置の作品となっています。そのふたつの作品で主役級の働きを為した求盗の希仁や女将の蓮が登場してくるのが素直に嬉しいのですが,何よりも『琅邪の鬼』で死んだ筈の房中術の達人である佳人が重要な役割を担うことが面白い。尤も,作中では本当に佳人本人なのか,或いは佳人と瓜二つの兄弟なのかは遂に明らかになることはありませんでしたが。この佳人と彼を巡る美女たちの艶めかしく悲しい5篇が収録されております。『琅邪の鬼』や『琅邪の虎』を踏襲する形で提示される謎は如何にも魅力的。その真相もいささか反則めいてはいますが,この世界観からは充分に納得に到るものとなっております。いずれも所謂不可能犯罪を扱いながら趣向も様々で飽きさせません。5篇を通じて言えるのは悲しい運命を背負った女性に対する佳人の限りない優しさと愛情の深さでありましょう。常に女性をその不幸から救う為に尽力する佳人の姿が印象的であります。或いはこれこそが房中術の真髄と言えるのかもしれません。短篇であるが故に謎も徒に複雑になり過ぎていないのが好印象。本篇は琅邪を舞台にした2作から『咸陽の闇』で咸陽へと移ってしまった為に希仁や蓮の登場機会が失われてしまいました。このような形で琅邪を舞台とした作品に触れられるのが嬉しいです。この趣向の作品もまた発表して欲しいものです。本作の直系の続きは流石に厳しいかもしれませんけれども。
タグ:丸山天寿
posted by 森山 樹 at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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