2013年12月10日

森晶麿『黒猫の遊歩あるいは美学講義』

〈2013年読書感想29冊目〉
森晶麿『黒猫の遊歩あるいは美学講義』


 美学を専攻する若き大学教授,通称黒猫と彼の付き人を務める大学院生のふたりが出逢う不思議な事件を描いた連作ミステリィ短篇集です。6篇が収録されていますが,いずれもエドガー・アラン・ポオの著作と関連付けられるのが面白いところ。これは単なる偶然ではなく,付き人の研究対象であるエドガー・アラン・ポオの著作に対しての美学的な考察を黒猫が試みているということでもあります。残念ながらエドガー・アラン・ポオの作品全てに触れているわけではないので面白さの全てが伝わったわけではありませんが,それでもなお非常に楽しむことが出来ました。それはやはり黒猫と付き人という主役ふたりの造形が秀逸ということでありましょう。ひとりひとりであれば,或いは凡庸な造形にも思えるのですが,黒猫と付き人のふたりが揃った時の類稀な距離感が実に素晴らしいのです。友達というには親密で,恋人というには憚られるこの関係は黒猫と付き人独自の距離感であると言っても過言ではないのでしょう。それぞれが互いを想っているのは確かでありますが,それを露骨に表面に出さない姿に美を感じます。付き人が臆病なだけで,黒猫の彼女への好意というのは彼の言動の端々に感じるのですけれどね。ミステリィとしてもエドガー・アラン・ポオの作品に対する作者の愛情が伝わってくるのが嬉しいです。個人的には黒猫と付き人のミステリィを交えた恋愛小説と捉えているのですけれども。美学を題材にするに相応しい美意識に富んだ美しい物語であると思います。苦さや切なさ,或いは人間の悪意を孕んだ物語も含まれますが,それでもなお読後に美しさを感じるのが素晴らしい。今後ともに読んで行きたいシリーズでありました。本当に満足です。
タグ:森晶麿
posted by 森山 樹 at 20:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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