2014年01月26日

森晶麿『黒猫の接吻あるいは最終講義』

〈2013年読書感想31冊目〉
森晶麿『黒猫の接吻あるいは最終講義』


 〈黒猫〉シリーズの第二作目。初の長篇作品でもあります。前作同様にエドガー・アラン・ポオの作品に彩られた美学に溢れる雰囲気が非常に好み。端正で美しいミステリィであると同時に黒猫と付き人の距離感が微笑ましくも切ない恋物語となっております。殊に題名通りに黒猫がパリに赴任することが明かされる最終講義以降の付き人の心の乱されようがたまらなく素敵です。所謂,恋物語は本来得手とするところではありませんが,この黒猫と付き人のふたりの関係には思わず引き込まれてしまいます。ふたりの距離感があまりにも絶妙ということなのでありましょう。また,今作では黒猫の過去或いは親しい人々が物語に絡んでくるというのも大きい。自分の知らない黒猫の姿に当惑する付き人の姿が完全に恋する乙女になっています。なお,今作で取り上げられるポオの作品は『大鴉』『ベレニス』『リジイア』など。『大鴉』しか触れていないのはやはり残念であります。ミステリィとしての謎解きは意外性はないけれど過不足なくまとまった感じです。黒猫と付き人のもどかしい関係は,それでも少しずつふたりの望む形で近づきつつあるのが嬉しい。遠く離れることで或いは変化が生じるかもしれませんが,いつか必ず結ばれる日が来ると願いたくなる作品であります。付き人が自信を持てないだけで黒猫の意思表示はかなり明確だとも思いますけれどね。

 余談。相変わらず,丹地陽子による表紙絵が秀逸。この表紙絵だけで思わず頬が緩むものを感じます。紫のドレスに身をまとった付き人があまりにも美しいのですよね。
タグ:森晶麿
posted by 森山 樹 at 12:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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