2014年03月30日

森晶麿『黒猫の刹那あるいは卒論指導』

〈2013年読書感想40冊目〉
森晶麿『黒猫の刹那あるいは卒論指導』


 学生篇と銘打たれた〈黒猫〉シリーズの短篇集。黒猫と付き人の出逢いが描かれるというのは嬉しい。全部で6篇が収録されています。長篇には長篇の良さがありますが,この〈黒猫〉シリーズに限ってははっきりと短篇集のほうが好み。黒猫に対する付き人の想いの変化が徐々に感じ取れるのが微笑ましいです。相変わらず,黒猫と付き人の距離感が素敵。特に学生篇ということで,まだ黒猫の付き人になる前から付き人になるまでのゆっくりと変化する想いがたまらなく切ないです。特に黒猫への想いに気付いた後の付き人は完全に無自覚の恋する乙女となっています。しかし,黒猫も黒猫で最初から付き人のことを想っていたということが如実に窺えるのが楽しい。ふたりとも或る意味では不器用で臆病なのでありましょうね。よく似ているといってもいいのかもしれません。だからこそ,地道に少しずつ,けれど着実に距離を縮めていっているとも言えるのでしょうけれども。互いに互いを想う姿が美しいです。収録されている6篇どれもが如何にも〈黒猫〉らしくて好きなのですが,特に「複製は赤く色づく」が好みかなあ。夏葉さんの想いはきっと届くと信じたい。本物の愛は終わらないと告げる黒猫の姿が印象的。そして,黒猫への付き人の想いが少しずつ形作られつつあることが窺える作品でもあります。なお,6篇とも題材となっているのは人と人との想い。それが黒猫と付き人の想いと重なり合っている構図が美しいです。他人の想いに触れることで自分の想いを自覚する付き人の姿が非常に良いです。相変わらず,端正で清冽なミステリィ短篇集であります。是非ともこういった形での学生篇を続けて欲しいもの。勿論,本篇の続きも待ち望んでおります。
タグ:森晶麿
posted by 森山 樹 at 17:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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