2014年05月25日

ピーター・トレメイン『翳深き谷(上)』

〈2014年読書感想2冊目〉
ピーター・トレメイン『翳深き谷(上)』


 西暦7世紀のアイルランドを舞台とした〈修道女フィデルマ〉シリーズの長篇第6作目。古の神々を信奉する禁忌の谷グレン・ゲイシュで発生した殺人事件の謎に修道女フィデルマとサクソン人の修道士エイダルフが挑むことになります。三十三人の若者が惨殺されるという儀式めいた事件が非常に魅力的。また,フィデルマとエイダルフを迎え入れるグレン・ゲイシュの人々の胡乱さがたまりません。特にグレン・ゲイシュの族長であるラズラに仕えるドゥルイドのムルガルの存在が興味深い。キリスト教の信徒であるフィデルマと立場を異にする為に悉く対立しますが,それでいて何処となく憎めない感じもあるのですよね。論理的で怜悧な知性もフィデルマに匹敵する雰囲気を漂わせます。また女傑と呼ぶに相応しいラズラの妹オーラやフィデルマと同じくキリスト教を広める為にグレン・ゲイシュを訪れたソリン修道士なども油断の出来ない存在に思えます。個人的には美貌の薬草治療師マルガが気になるところであります。物語はまだ前半ということでグレン・ゲイシュの入り口で発見された三十三体の円形に配置された亡骸の謎をフィデルマたちが追っている段階。但し,不穏な雰囲気が徐々に高まって行くのを感じます。グレン・ゲイシュ側もキリスト教を受け入れようとするラズラに対するムルガルやオーラといった図式となっており決して一枚岩とはなっていません。やがて勃発するであろう更なる事件の予感が物語への期待感を否が応にでも高めてくれます。やはり〈修道女フィデルマ〉シリーズの雰囲気を愛して止みません。
posted by 森山 樹 at 18:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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